月組『NINE』を観てきました。
まず最初に言いたいことがあります。
私は途中で、宝塚を観に来たことを忘れていました。
もちろん悪い意味ではありません。
むしろその逆です。
気が付けば、「月組公演を観ている」のではなく、一つの上質なミュージカル作品の世界にどっぷり浸かっていました。
『サンセット大通り』を観た時にも似た感覚がありましたが、今回の『NINE』でも同じ衝撃を受けました。
本日は、興奮醒めやらぬうちに、手短に感想をまとめたいと思います。

オーブだからこそ成立した作品
今回、改めて感じたのは、東急シアターオーブの音響の素晴らしさです。
オーケストラの音には厚みがあるのに決してうるさくない。
歌詞も台詞も非常に聞き取りやすく、耳に心地よい。
そのおかげで、観客は音に邪魔されることなく作品世界へ没入できます。
私は普段から生演奏が好きなのですが、今回はオーケストラの存在感も抜群でした。
開場中には楽器の音出しも聞こえ、生演奏であることを実感。
そして本編では物語を支え、フィナーレでは一転して大暴れ。
思わず「石井先生、今ごろタクトをノリノリでぶん回しているだろうな」と想像してしまいました。
最後までオーケストラが姿を見せなかったのだけが残念です。
あの演奏を聴いた後だと、カーテンコールで拍手を送りたくなります。
余談ですが、オーブの音響の良さを改めて体感してしまったので、『オペラ座の怪人』もオーブで観たいと思ってしまいました…
Bunkamuraには頑張って来日公演実現して欲しい⋯
(先日、7月にオーブで上演されたサラ・ブライトマンの『サンセット大通り』はBunkamuraが主体となって招聘した公演でした…)

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改めてオーブのミュージカル専用劇場としての底力を感じました…

オーブでの上演ってだけで、ワクワクが止まらない!
月組生が「役」として存在していた
今回の公演で特に印象的だったのは、誰もが宝塚の役割ではなく、『NINE』の登場人物として存在していたことです。
ぱるくん(礼華はるさん)のクラウディアは驚くほど自然でした。
長身の男役というイメージが強かっただけに、最初はどうなるのだろうと思っていましたが、まったく問題ありませんでした。
高音もきれいに響いていて、歌が上手いことを始めて知りました(汗)
るねくん(夢奈瑠音さん)のママ役も素晴らしく、発声や歌も自然で、まるで退団後に外部ミュージカルへ出演している元タカラジェンヌを観ているようでした。
もともと優しい顔立ちがママ役に見事にハマっていました。
まゆぽんの女性プロデューサー役も強烈でした。
去年の今頃は『悪魔城ドラキュラ』でドラキュラ伯爵を演じていたのに、この1年後に、ゴージャスなダルマ姿で美脚を晒して踊っているというのを想像出来たでしょうか…(笑)
その振れ幅に笑ってしまいましたが、役としては完璧に成立していました。
娘役たちの大活躍
今回は娘役たちも非常に印象的でした。
桃歌雪ちゃんの娼婦サラギーナは圧巻。
『RYOHU』のお母さん役と同じ人とは思えないほど生命力に溢れ、強烈な存在感を放っていました。
美渦せいかちゃんの愛人カルラも魅力的でした。
宝塚ではなかなか見られないタイプの大人の女性を、生き生きと演じていたのが印象的です。
朱鷺あおいちゃんも毒舌な評論家役として確かな爪痕を残していました。
また、配役発表時に話題となったスパの聖母姉妹も大成功だったと思います。
花妃舞音ちゃんは以前より発声に落ち着きが増し、大人の女性らしい雰囲気がしっかり出ていました。
乃々れいあちゃんも垢抜けていて美しかったです。
そして何より、彼女たちは単なる美人枠ではありません。
スパの聖母姉妹は作品世界へ観客を導くストーリーテラー的な役割も担っており、その存在感は十分に発揮されていました。
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皆さん、ミュージカル女優として存在していた…

今回は、ちなつさん以外の出演者は男役・娘役ではなく、舞台女優だったね。
強い女性たちとグイド
今回の『NINE』は、とにかく女性が強い作品です。
妻ルイーザを演じた天紫珠李さんも、妻としての存在感と芯の強さを見事に表現していました。
舞台上の女性たちは皆、自分の人生をしっかり生きています。
そんな女性たちに囲まれながら右往左往するグイド。
正直、かなりのクズ男です。
浮気するし、言うことはコロコロ変わるし、問題から逃げる。
それでもどこか憎めない。
むしろ気の毒に見えてしまう。
これは鳳月杏さんの持つ圧倒的な色気があったからこそ成立したと思います。
この作品の女性たちの強さに対抗するには、ちなつさんの色気は必須でした。
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なんかもう、ちなつさんの男役の集大成だね…

クズ男なのに魅力的過ぎるってズルい…
フィナーレで帰ってきた宝塚
本編は完全に大人のミュージカル。
しかしフィナーレで宝塚が帰ってきます。
娘役たちを従えて踊る天紫珠李さん。
男役群舞。
娘役との絡み。
そして、ちなじゅりによる大人のデュエットダンス。
個人的には、ずっと観たかったタイプのカッコいいデュエットダンスでした。
さらに最後の鳳月杏さんのソロダンス。
タバコをくわえた姿がとにかくカッコいい。
本編で散々グイドに振り回された後に見ると、その破壊力は抜群です。
フィナーレも全体的にカッコよく、指田演出のセンスを実感。
お芝居もショーも、どちらもエッジを効かせた感じは指田先生の持ち味だなと思います。
ほんの僅かな時間でしたが、指田演出でちなじゅりでカッコいいショータイムが見られて眼福でした。
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オケの弾けっぷりもスゴかった…

石井先生の、「よっしゃ、ここから行くでー!!!」が想像出来る…
まとめ
私は今回の『NINE』は大好きな作品になりました。
ただし、宝塚らしさという観点では評価が大きく分かれる作品だとも思います。
男役の魅力や宝塚ならではの華やかさを期待する人の中には、好みが合わない人もいるかもしれません。
しかし、ミュージカルが好きな人には非常に満足度が高い作品だと思います。
音楽。
演出。
芝居。
歌。
舞台装置。
そして劇場空間。
それらが奇跡的なバランスで噛み合った結果、私は途中から宝塚を観ていることを忘れていました。
それほどまでに作品世界へ没入できた、幸せな観劇体験でした。
そして今はただ一つ。
DVDもスカイ・ステージ放送も叶わないこの作品を、少しでも長く記憶に留めておきたいと思っています。
あわせて読みたい:過去に投稿した『NINE』への期待について
過去に投稿した関連記事もあわせてお読みください。




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