こちらも日が経ってしまいましたが…
先週、花組『エリザベート』のポスターが公開されました。
(いや、『もののけ姫』の感想をぽちぽち書いていたので、全ツ配信日とポスター公開を同じ日にぶつけてきて、大混乱しました…笑)
SNSでは前回の先行画像公開に続き、「美しい」「加工感が強い」「歴代と雰囲気が違う」など、さまざまな感想が飛び交っています。
私もポスターや動画を見て感じることがありました。
結論から言うと、私は『みさきちゃんエリザは若干改善されているけど、ひとこトートはまだまだ加工感が残っているな…』と感じました。
正直に言うと、今回の花組『エリザベート』のポスターには「もったいない」という思いが残りました。
ひとこトートは世界観を優先した結果、本来の魅力が全く引き出されていないと感じたからです。
ただ、この感想は「ポスターが悪い」という話ではありません。
実は、今回のエリザベートのポスター写真を手掛けた渞忠之さんは、つい先日観たスーパー歌舞伎『もののけ姫』の宣材写真とスチールを手掛けていることをチラシとプログラムから知りました。
公式チャンネルではスチール撮影の舞台裏の動画も公開されていて、こちらは、カメラマンさんの本来の持ち味と他の制作スタッフさんたちのチームワークが見事に融合していて、良い写真に仕上がっています。
「宣材写真とは何か」を改めて考えるきっかけになりました。
そこで今回は、花組『エリザベート』のポスターをきっかけに、宣材写真と舞台、それぞれに求められる”美しさ”の違いについて考えてみたいと思います。
▼前回の先行画像から感じたことはこちらからどうぞ〜

宣材写真は「止まった一枚」で作品世界へ誘う芸術
宣材写真を見たとき、私たちはつい「この人が素敵」「ビジュアルが好み」といった印象で見てしまいがちです。
もちろん、それも宣材写真の大切な役割のひとつだと思います。
しかし、本来の宣材写真は、出演者を美しく撮ることだけが目的ではありません。
一枚の写真だけで、
「どんな作品なのか」
「どんな世界観なのか」
「劇場でどんな体験が待っているのか」
を伝え、観客を作品の世界へ誘う。
それこそが宣材写真の役割だと私は思っています。
宣材写真は「役者」ではなく「作品」を伝えるもの
構図、ライティング、衣装、色彩、表情。
そのすべてを組み合わせながら、一瞬で作品の空気を伝える。
だから宣材写真は、単なる人物写真ではなく、「作品の顔」と言える存在です。
まだ舞台を観ていない人が、その一枚から物語を想像し、「観てみたい」と感じる。
そんな力を持っているからこそ、宣材写真は舞台作品にとって非常に重要な存在なのだと思います。
『もののけ姫』で感じた圧倒的な世界観
先日観劇したスーパー歌舞伎『もののけ姫』では、そのことを改めて実感しました。
宣材写真やスチールには、アシタカ・サン・エボシ御前の生き様が凝縮されていました。
衣装の質感。
鮮やかな色彩。
光と影の使い方。
どれも一枚の写真とは思えないほど物語性があり、「この舞台を観たい」と自然に思わせる力がありました。
写真だけで、その世界観を、キャラクター性を表した渞忠之さんの表現力は大変素晴らしいです。
だからこそ、今回公開された『エリザベート』のポスターを見たとき、同じ方で「なぜここまで印象が違うのだろう」と改めて考えるきっかけになりました。
『エリザベート』は作品との相性が少し違ったように感じた
今回公開された『エリザベート』のポスターは、もちろん作品として丁寧に作り込まれています。
だからこそ、この記事は「良い・悪い」を論じたいわけではありません。
私が感じたのは、写真家の表現と作品世界との相性についてです。
同じ写真家が手掛けた『もののけ姫』が見事に作品の雰囲気とマッチしていました。
しかし、今回の『エリザベート』はだいぶ違う印象を受けました。
永久輝トートは世界観が勝ち、本人の魅力が全く引き出されなかった印象
今回のポスターや動画を見て最初に感じたのは、ひとこ(永久輝せあさん)演じるトートです。
人外らしい幻想性や神秘性を表現しようとした意図は伝わってきます。
一方で、メイクやレタッチが強く入ったことで、ひとこ(永久輝さん)本来の繊細な表情や透明感が全く見えにくくなったようにも感じました。
ひとこ(永久輝さん)は、ふとした目線や自然な表情に独特の美しさがある男役です。
その魅力を知っているからこそ、「もう少し本人の持ち味が生きても良かったのでは」と感じたのが正直な感想でした。
もちろん、これは宣材写真だからこその表現なのかもしれません。
ただ、もののけ姫の宣材写真の舞台裏の動画を見ていると、他の制作スタッフのアイデアが結集されて出来上がっているようにも見受けられました。
逆に、エリザベートは、他の制作スタッフが今までのビジュアルイメージに引っ張られすぎて、メイクが変な方向に気合入り過ぎてしまったのかなという気すらします。
そんなわけで、「ひとこをもっと魅力的に見せられたのではないか」という思いが最後まで残りました。
だからこそ、その印象を舞台で覆してくれることを期待しています。
以下の動画は、三井住友カード公式チャンネルからの引用です。
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動画だとみさきちゃん、思ったよりメイクに違和感なかった〜
でも、この前『もののけ姫』の美しい衣装を見たせいか、エリザベートの衣装はコスパ重視感が強いのが気になる…

ひとこさんはリップはもう少し赤みがあっても良さそう…
舞台ではもう少し血色が良くなることを期待したい…
かりんルキーニは狂気を封印し、新しい色気を見せた
一方で印象が大きく変わったのが、かりんちゃん(極美慎さん)演じるルキーニです。
ルキーニといえば、どこか危うく、何をしでかすか分からない狂気やケレン味が魅力の人物。
しかし今回の宣材では、その毒気を前面に出すのではなく、柔らかく甘いイタリアの伊達男のような雰囲気が印象的でした。
私はこれまで、かりんちゃんが舞台で狂気を巧みに表現してきた姿を何度も観てきました。
だからこそ、「できない」のではなく、今回はあえて封印したように感じたのです。
その結果、新しい色気や大人の魅力が見えたことは、とても新鮮な発見でした。
舞台では、その柔らかな雰囲気がどのように狂気へと変化していくのか。
そこも楽しみのひとつになりそうです。
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写真からはエキセントリックさは皆無…

どちらかと言うと、『黒蜥蜴』の雨宮っぽさすらある…
ほのかフランツは新しい一面を見せてくれた
ほのかちゃん(聖乃あすかさん)演じるフランツも、とても印象に残りました。
これまでのほのかちゃんには、どちらかというと柔らかさや穏やかさ、甘さを感じることが多かったように思います。
しかし今回の宣材では、皇帝らしい威厳と責任感を感じさせる、シャープで硬派な表情が印象的でした。
フランツは優柔不断で繊細な一面を持つ人物でもありますが、一国を背負う皇帝でもあります。
その「皇帝」としての顔を強く打ち出した今回のビジュアルは、「ほのかちゃんにはこんな表情もあるのか」と新たな発見にもなりました。
写真家の力量ではなく、作品とのマッチングだったのではないか
今回いろいろ考えた末にたどり着いた結論。
写真家の持ち味に引っ張られすぎて、メイクに力が入りすぎて、作品の雰囲気からズレが生じたのではないか。
『もののけ姫』では、森の生命力や勇壮さ、ケレン味あふれる世界観が、一枚の写真から溢れていました。
一方、『エリザベート』が描くのは、孤独や退廃、美しさ、儚さといった、より静かで繊細な世界です。
作品が変われば、求められる表現も変わります。
劇団☆新感線や歌舞伎の写真などから、渞さんはどちらかというと「動」や「力強さ」の表現に長けている印象があります。
『もののけ姫』では、一枚の写真を見ただけで作品世界へ引き込まれ、「この舞台を観たい」と心が動きました。
ですが、『エリザベート』は、「静」「深淵」なイメージ。
しかし、その世界観が、「妖(あやかし)」になってしまいました。
ひとこ本来の魅力がだいぶ後ろへ下がってしまったように見えたことも含めて、「もっと他に方法なかったのだろうか。」と思わずにはいられません。
もちろん、宣材写真は写真家一人で作るものではありません。
コンセプトやメイク、衣装、ライティングなど、多くのスタッフが関わって完成する共同制作です。
だから今回感じた「もったいなさ」も、誰か一人の問題ではなく、作品全体として選ばれた表現だったのだと思います。
それが、今回ポスターを見た率直な感想でした。
舞台は「動き」の中で美しさが完成する
ここまで宣材写真について考えてきましたが、だからといって、今回のポスターだけで『エリザベート』の世界観が完結するわけではありません。
なぜなら、宣材写真と舞台では、求められる美しさそのものが違うからです。
宣材写真と舞台では評価軸そのものが違う
宣材写真は、一枚の静止画で作品世界を伝える芸術です。
構図やライティング、衣装、表情など、その一瞬に作品の魅力を凝縮し、「この舞台を観てみたい」と思わせることが役割になります。
一方、舞台は”時間の流れ”の中で完成する芸術です。
歩き方。
視線。
歌声。
相手役との距離感。
そして、照明を浴びながら刻々と変化する表情。
そうしたすべてが重なり合って、一人の人物が生き始めます。
だから、宣材写真では強く感じたメイクも、舞台では客席からの見え方を考慮して違うアプローチで変えてくる可能性もあります。
舞台には舞台ならではの「美しさ」があります。
同じ「美しさ」でも、宣材写真と舞台では評価する軸がまったく違うのです。
だから私は舞台のひとこトートに期待したい
今回の宣材では、ひとこ(永久輝せあさん)の本来の魅力が見えにくく感じてしまいました。
しかし、それでも私は舞台への期待を失ってはいません。
その理由は、これまで何度もひとこの舞台での美しさを見ているからです。
とはいえ、『EXCITER!!』のトコボーイは変化球でしたが(笑)
少し野暮ったく、それでいて愛嬌があり、「ダサ可愛い」と思わず笑顔になってしまうキャラクターを、絶妙なバランスで演じていました。
カッコよくも愛らしくも見せるひとこの多面性には改めて魅了されました。
ひとこ(永久輝さん)は、静止画だけでは伝わりきらない魅力を、舞台の上で何倍にも膨らませられる男役さんだと思っています。
だからこそ、今回のトートも、実際に歌い、歩き、エリザベートと向き合う姿を観て初めて、感動するのではないかと思っています。
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うーん、もののけ姫は良かったけどな…

劇団☆新感線や歌舞伎のイメージに引っ張られた?
まとめ
今回、同じ写真家が手掛けた『もののけ姫』と『エリザベート』を見比べたことで、改めて宣材写真について考える機会になりました。
作品が違えば、求められる世界観も違う。
そして、その世界観を一枚に凝縮することは、想像以上に難しい仕事なのだと思います。
今回のポスターには、人それぞれさまざまな感想があるでしょう。
私自身も、「ひとこ(永久輝さん)本来の魅力をポスターで見たかった」という思いは残っています。
それでも、これはあくまでも宣材写真であり、舞台そのものではありません。
今回はエリザベートの世界観を表現することの方が強く出てしまい、被写体のひとことみさきちゃんの本来の魅力が置き去りになってしまいました。
宣材写真は、止まった一枚で作品世界へ誘う芸術。
舞台は、動きの中で美しさを完成させる芸術。
だから私は、引き続き、劇場で息づく”ひとこトート”に会える日を楽しみに待ちたいと思います。
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