正直に言うと、最初はまゆぽんの女役が見たい、という不純な動機でした。
でも――
気付けば、そのことを忘れてしまうくらい、物語に引き込まれていました。
以降、ネタバレが続きますので、知りたくない方はここでストップしてください。
トンチキと思っていた作品が、気付けば深い物語に
今回、谷貴也先生の演出ということで、
またトンチキになるのかな…と思いながら見始めたのですが、
いい意味で裏切られました。
哲学的なテーマや芸術家の生き様を、
“わかりやすく見せるための手法”として、あえて奇抜な表現を使っている――
そんな意図に気付いた時、作品の見え方が変わったように思います。
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とは言え、『エンジェリック・ライ』は不服だけど・・・・

まだそれを言う!?
構造がわかった瞬間、一気に引き込まれた
どこで引き込まれたのか、と聞かれると難しいのですが、
この作品の“構造”が見えた瞬間だった気がします。
ヤング・ガラとダリの愛人アマンダ、二役を演じる星沢ありささんが、
物語の中でストーリーテラーのような役割を担っていて――
過去と現在を繋ぐ存在として機能していることに気付いた時、
一気に物語の見え方が変わりました。
ダリランドと現実が交差する構造
本作は、晩年のダリの混濁した意識の中に広がる超現実世界「ダリランド」を舞台に進んでいきます。
この世界に登場する住人たちは、ダリの過去の作品たち。
そして彼らを束ねるカセキョー(華世京さん)演じるナルシスもまた、作品から生まれた存在です。
一見すると奇想天外で少し掴みづらい構造ですが、2幕では現実世界の過去――ニューヨーク移住後の出来事が描かれ、アマンダの語りによって物語が少しずつ繋がっていきます。
観ている側も、記憶が曖昧なダリと同じように、“後から理解していく”構造になっていたのが印象的でした。
魅力的な登場人物たち
最初の印象では、ダリが主人公・超現実世界と、何かとっつきにくい印象がありましたが、いざ見始めたら、ダリのことがよくわかっていなくても、すんなり入っていけて、気づけば物語の世界に引き込まれていました。
登場人物たちも魅力的だったのが大きいかなと思いました。
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今回は人物設定が丁寧に作り込まれていた印象。

それぞれの人物たちがパズルのピースのようだったね。
ダリという存在ー非凡な男の心の内を繊細に演じるー
主演のダリを演じたせおっち(瀬央ゆりあさん)が印象的でした。
冒頭の老人の佇まいがとても自然で、
記憶が曖昧な状態の中でも芸術家として何も出来なくなって苦悩する姿は、胸に迫るものがありました。
そんな苦悩している中、突然、ダリランドからやってきたというナルシスが登場し、彼の手引きでダリランドに連れて行かれます。
アマンダの語りをきっかけに少しずつ過去を取り戻し、
やがて創造へと向かっていく――
鬼才・非凡・奇抜、という印象が先行する印象のダリですが、少年時代に、ダリは幼くして亡くなった兄と同じ名前を付けられたことを、両親から聞かされ、それからずっとモヤモヤを抱えて生きてきて、自己肯定感低めになっていました。
そんな彼には絵の才能があり、それを両親に認められ、画家の道を歩み始めます。
でも、自己肯定感低めなダリは、女性にかなりの苦手意識を持っていました。
しかし、ガラとの出会いで、ダリはよやく女性への苦手意識を克服、ガラを最愛の人として生涯愛し続けました。
奇抜なルックスとは裏腹にナイーブな心の内を、せおっちが繊細に演じており、今までの中でとても良かったです。
ダリのビジュアルもハマっていましたが、それ以上に芸術家の繊細さ・ガラを母のように慕う純真さが印象的でした。
せおっちのダリを見ていると、ダリって本当はこういう人なんだなーというのが伝わってきました。
その姿は、“非凡な芸術家”というよりも、ひとりの人間としてのダリを感じさせるものでした。
クイーン・ガラという存在 ―― 強さで包む愛
そしてやはり印象的だったのが、まゆぽんのクイーン・ガラ。
ダリランドの支配者として君臨するその姿は、いわゆるゴージャスな女役というよりも、圧のある、迫力で押してくるタイプの女性。
威厳を見せる場面ではどこか男役のニュアンスも感じさせ、ロングドレスでの立ち回りもダイナミックで、思わず「侍タイムスリッパーの殺陣師から転生したのでは?」と言いたくなるほどでした(笑)
人がいる場では徹底して女王として振る舞いながら、二人きりになるとふっと妻の顔に戻る。
そして人の気配を察した瞬間、再び女王へと戻る――
このスイッチの鮮やかさがお見事でした。
クイーン・ガラは、ダリに現世で生きてほしいという想いから、
あえて冷たく振る舞い、「ダリのことは嫌い!」と公言・突き放すような言動を取ります。
それは拒絶ではなく、ダリを生かすための選択だったのだと思います。
さらに、過去にダリの知らないところで贋作に関わってしまったという罪の意識から、
「自分には愛する資格がない」と自らを縛っている。
だからこそ――
愛しているのに、遠ざける。
強く当たるのも、突き放すのも、すべてはダリのため。
そして同時に、それはガラ自身の“贖い”でもあったのだと感じました。
また、せおっちとの並びで膝折なしにはびっくりしましたが(笑)、
ガラがダリを母のように包み込みながらも、力強く導く存在として描かれていることを考えると、
膝折せずに、身長が逆転していたのは正解だったと思います。
※まゆぽん(輝月ゆうまさん)のクイーン・ガラの配役にときめいた当時の思いはこちらから(笑)↓

ナルシスという案内人
カセキョーのナルシスは、ダリランドという夢の中の超現実世界へと導く、道先案内人的な存在でした。
白塗りビジュアルのインパクトに目が行きがちですが、立板に水のような滑らかな台詞回しは、まさにダリランドの住人たちのリーダー的な存在として頼もしさがあり、彼女のしなやかなダンスはダリランドの特異な空間そのものを見せていくような表現が印象的でした。
カセキョーは何かと光輝く美貌と堂々とした立ち姿に目が行きがちですが、あらためて“ダンサーとしての存在感”を強く感じさせられました。
言葉で説明するのではなく、身体の動きで世界観を提示していく――
ダリランドという空間の質感を支えていたのも、このナルシスだったように思います。
カセキョーの新たな一面を見たような気がします。
星沢ありさちゃんのアマンダ・リア
今回、この作品のもう一人のヒロインであり、ストーリーテラーも担ったアマンダ・リア。
ヒロインと言うには、随分とやさぐれた感じがありましたが、アマンダ役を好演していました。
若い頃のガラに似ている、ということで長らくダリの愛人だったアマンダ。でも、彼女もガラに負けず劣らず、奔放で、でも、自分の進みたい道をブレることなく進み続ける力強さがまた、ダリが惹かれた部分だったかもしれません。
娘役としては異色なお役ですが、しっかりと自分のものにされていたような印象がありました。
まとめ ―― 愛と再生の物語
アマンダの語りを通して、ダリは徐々に過去を取り戻していきます。
そして、お手伝いさんが修復した時計を目にした時――
止まっていた“時間”が、再び動き出したように感じました。
記憶が戻り、時間が戻り、
そしてダリは、芸術家として最後に生み出すべき作品を見いだす。
その瞬間、彼は再びダリランドへと踏み入れていきます。
芸術家として何も生み出せなくなったダリを死の淵から救い、
愛しながらも、その資格はないと自らを縛っていたガラの想いも解き放たれていく。
罪の意識に囚われていたクイーン・ガラもまた、
最後にはその重荷から解放され、
ダリランドにも静かな平和が訪れる――
そんな“大団円”へと至る物語でした。
強くて、少し不器用な愛。
そのかたちが、静かに心に残る作品でした。
この作品をきっかけにダリのことを知りたくなりました
今回の舞台をきっかけに、ダリについてもう少し知りたくなり、関連作品や本も調べてみました。
以下、自分の備忘も兼ねてご紹介します。
※もうすぐGWなので、色々触れてみようかなと。
映画『ウェルカム・トゥ・ダリ』
2幕目の70年代のニューヨークのパーティーシーンが印象的でしたが、こちらの映画はまさに、70年代のニューヨークのダリの狂乱の日々を、アシスタントの青年の目を通して描かれています。
(ただし、予告編見た限り、刺激的なシーンが多そうなので、苦手な方はご注意を・・・)
映画『ウェルカム・トゥ・ダリ』公式サイト 注:映画の公開は終了しています

また、DVDは出ていないようですが、オンラインやサブスクからの視聴が可能です。
気になる方は以下からチェックしてみてください。
本『もっと知りたいサルバドール・ダリ 生涯と作品』
ダリの生涯を、時系列に沿って図版等も交えて解説した本。
いきなり買うのはハードル高いので、図書館で早速、リクエストしました(笑)
↓図書館で借りた後の感想はこちらに詳しく書いています。東京公演をこれから観劇する場合は予習にもピッタリです。

おまけ
今回、実は遠征の帰りの新幹線から視聴しました。
新幹線のWi-Fiは結構遅いので、最終的にはスマホのパケットで視聴しましたが、途中、トンネルやエリアによっては途切れたものの、何とか観ることが出来ました。
また、イヤホンを持っていなかったので、これを機に、そこそこ高性能のイヤホン型ヘッドセットも購入。
SONY WF-C510 という機種で、ソニーのイヤホンとしては、比較的安価な部類ですが、バッテリーの保ちも良く、PCやスマホとの連携も出来ます。
外音を取り込みながら聴くことも可能で、今回はこちらのモードで視聴しましたが、音声もクリアでした。

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